SPECIAL もっとわかる、エネルギーのこと

#コープのでんきをさかのぼる旅

王子グリーンエナジー江別バイオマス発電所

#001 瀬野孝徳さん

釧路市出身。91年王子製紙株式会社入社。製紙プラント設計などを経て、2013年よりバイオマス発電所の建設を担当。19年バイオマス発電所の所長に就任。

コープのでんきトドック電力の「再生可能エネルギー100%メニュー」は自然の力を利用した、持続利用できる100%北海道産の再生可能エネルギー。北海道の素材を使って、北海道の発電所で生み出されています。食べ物の源流に生産者がいるように、電気にもそれを生み出す人たちがいます。どんな場所で、どんな人が、どうやって電気を作っているのか。気になった取材班はトドックと一緒に、いざコープのでんきが生まれる源流をめざす旅へ。

 トドック電力の「再生可能エネルギー100%メニュー」は、札幌市のお隣、江別市にある王子グリーエナジー江別のバイオマス発電所から調達しています。発電規模は年間約1.8億kWh(キロワットアワー)で、一般家庭約6万世帯分に相当します。「木質バイオマス発電の基本的なしくみは石炭などを燃料にする火力発電と同じですよ」と、案内してくださった瀨野所長。「水の入ったやかんをストーブの上に置くと沸騰して蒸気が出ますよね。そのようにして発生した蒸気の力で巨大な風車のようなタービンを回して発電します。太陽光発電や風力発電は天候によって発電量が左右されますが、木質バイオマス発電は安定的に電気を供給できるのが特徴です」。

王子グリーンエナジー江別バイオマス発電所全景

 木だって燃やせばCO₂が発生するはず。なぜ、木質バイオマス発電は環境にやさしいのでしょうか?「カーボンニュートラルをご存じですか(コラム参照)。燃料を燃焼すればCO₂が発生しますが、木は山に生えていたときに光合成によって大気中のCO₂を取り込んでいたわけですから、トータルで温室効果ガスの量は変化しない、という考え方です」。なるほど!プラマイゼロってわけですね。

 「燃料のもととなるのは、間伐材や丸太を切り出したときに山に残された枝葉などの林地残材、製材で出た端材です。使用する木質燃料は年間約20万トンにのぼります。私たちは王子グループのネットワークで全道各地の山々から原料を調達しています。森に人の手が入ることで活力ある森林を維持でき、林産業の活性化にもつながります。原料運搬を通じて輸送産業にも貢献できます。北海道胆振東部地震の際に土砂崩れで発生した震災木の受け入れも行いました。震災木は土砂の付着が著しく、集積箇所で半年以上乾燥させたあと、当発電所では135トンを受け入れて使用しました」。

大きなかたまりや金属などの異物を取り除いた燃料チップは、使用するまで敷地内に保管します。

 木質バイオマス発電は地球環境にもやさしい上、北海道の地域経済にも貢献していることがよく分かりました。瀨野所長、最後にメッセージをお願いします。
 「北海道のいろいろな方々の協力によって木質燃料を集荷し、発電し、北海道に住む皆様へ電気をお届けしています。いうなれば地産地消の電力です。トドック電力を通じて多くの方々に安心してお使いいただけると私たちも幸いです」

前の記事
スイッチなひと
カネシメ髙橋水産株式会社
次の記事
スイッチなひと
株式会社ナシオ 代表取締役社長 平公夫さん