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ニールセン 北村 朋子さん

#004 ニールセン 北村 朋子(きたむら ともこ)さん

2001年デンマーク・ロラン島への移住を機に環境エネルギー問題や持続可能な社会への関心が芽生え、取材活動を開始。日本のメディアや企業、行政機関のための取材、視察コーディネートなど幅広く手がける。
神奈川県茅ヶ崎市出身。

環境先進国である北欧デンマークのロラン島に暮らし、日本とデンマークの架け橋として活躍するジャーナリストのニールセン北村朋子さん。北海道における再生可能エネルギーの可能性についてお聞きしました。

まずニールセン北村さんが住むデン マークやロラン島について教えてください。

デンマークというとアンデルセンやレゴを思い浮かべる方も多いでしょう。国土面積は九州とほぼ同じ。人口は約570万人で北海道と同じぐらいです。主要産業が農業というのも北海道と同じですね。福祉国家として有名で、医療費や生涯教育、高齢者福祉サービスは無料。国連の世界幸福度報告では世界2位(日本58位)、SDGs達成度ランキングは世界1位(日本15位)です。エネルギーに関しては再生可能エネルギー(以下、再エネ)に力を入れていて、2020年には全電力消費量の約半分を風力発電でまかなうという目標を掲げていますが、現時点でほぼ達成。さらに2035年までに電力及び暖房はすべて再エネでまかなうという目標を設定しています。特に私が住むロラン島は風力発電の風車がたくさん立ち並び、電力自給率は800%。多くを首都コペンハーゲンに供給しています。

そもそもデンマークはなぜ再エネに 積極的に取り組んでいるのでしょうか。

デンマークもかつては他国の石油に大きく依存していました。エネルギー自給率1%を下回った時期もあります。転換のきっかけは1973年のオイルショックです。当初政府は原発を利用する案を出しましたが、その是非を問う国民的な議論が巻き起こり、1985年に政府は原発を採用しないことを決定します。国民と政府が「どんな国でありたいか」「デンマークらしさとは何か」を問い続けて選択した結論でした。このように国民に開かれたプロセスや草の根運動によって、デンマークは現在の「自然エネルギー先進国」という地位を築き上げたのだと思います。国民が、自分たちの欲する未来を自分たちで選び取ったのです。

東日本大震災以降、日本でも原発再 稼働の是非を巡る議論が起き、再エネを 望む声が高まっています。しかし順調に普 及が進んでいるとは言いがたい状況です。

東日本大震災のあと、政府や電力会社、食を提供する企業などに対する信頼は大きく損なわれました。本当のことが見えない、何を信じたらいいか分からないという経験をした方もたくさんいるでしょう。そんな世の中だからこそカギを握るのは     COOP(協同組合)という組織だと思います。COOPは信頼関係で成り立っています。自分や家族が食べるものだから信頼のおける組織から買いたい、そう考えて組合員になるわけですよね。エネルギーも同じです。原発に頼らない社会にしたい、信頼できるところから電気を買いたい。食と同じように電気もCOOPから買いたいと思うのは当然でしょう。コープさっぽろが電力事業を行うという流れは、ある意味で必然だったと思います。そして「信頼が新しい顧客を生む」というモデルをCOOPが示すことで、既存の電力会社が変わり、社会が変わっていくのだと思います。

私が住むロラン島で風車建設に最初に乗り出したのは農家の人たちでした。「風が吹くだけで電気が作れて、それがお金になる。なんて素晴らしい仕組みなんだ」。そう言ってマイ風車を建てたのです。農家が食料だけじゃなくエネルギーも収穫することにより、経済的に自立できる基盤が生まれました。冷害で作物は育たなくても、エネルギーは収穫できますから。ロラン島の場合は風力でしたが、北海道はそれにこだわる必要はないでしょう。風力、太陽光、ワラ、ウッドチップ…。自分たちの土地に合う方法を採用すればいいのです。近年は温暖化による農作物への影響も懸念されていますが、農家がエネルギー生産に取り組むことで彼らは気候変動を多角的に理解できるようになるし、農業教育にもいい影響があるはずです。第一次産業を基板とする北海道が、そうした再エネ生産のモデルを築き、その先進地になればいいと私は思います。

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