SPECIAL もっとわかる、エネルギーのこと

王子グリーンエナジー江別
株式会社 江別発電所 
所長 金子 悟さん

#004

金子悟所長は1956年生まれ、奥尻島出身。1975年に王子製紙株式会社入社。2016年11月より現職

トドック電力の「FIT電気メニュー」は再生可能エネルギー100%。その一部をまかなっているのが、札幌市のとなり江別市にある王子グリーンエナジー江別の江別発電所です。江別発電所は「木」を使ってでんきをつくる木質バイオマス発電所ではありますが…、ん?木ででんきをつくるってどういうこと?どうして環境にやさしいの?教えて!金子所長。

10階建てのビルに相当する高さの循環流動層ボイラーを備えた王子グリーンエナジー江別株式会社江別発電所

 「木質バイオマス発電の基本的なしくみは火力発電と同じです。ボイラーで燃料を燃やし、蒸気でタービンを回して発電します。水の入ったやかんをストーブの上に置くと沸騰して蒸気が出ますよね。その蒸気の力で風車のようなタービンを回すわけです。燃料に石油や石炭、天然ガスを使うのではなく、木質チップを使うのが木質バイオマス発電です。化石燃料に頼らず、風力発電や太陽光発電のように天候に左右されることなく発電できるのが特徴です。

   木を燃やすのにどうして環境にやさしいの?とよく聞かれます。それはですね、燃料がポイントなんです。私たちが使う木質チップの材料は間伐材や、丸太を切り出したときに山に残された枝葉などの残材です。山林に放置されていたものを、運び出して、チップに加工して、でんきにしています。一般的にものを燃やせばCO₂が発生しますよね。木質バイオマス発電もやっぱりCO₂が発生します。ですが、燃料となる木は山に生えていたとき光合成によって大気中のCO₂を吸収していました。それを考慮すればトータルでCO₂はプラマイゼロということになる。これが『カーボンニュートラル』の考え方です。

   江別発電所では1日に約600トンの燃料を燃やしています。水管を張り巡らせた高さ38mの大きなボイラーを24時間焚き続け、1年間で1.8億キロワット時、6万世帯に相当するでんきをつくっています。ボイラーの中の温度は850℃ぐらい。ですから夏の暑い日には室温が50℃に達することもあります。これだけ暑いと巡回スタッフの熱中症が心配です。実はボイラー室の最上階には避難所があって、暑くてたまらないときは逃げ込めるようになっています。室内はクーラーをガンガンきかせ、冷蔵庫にはキンキンに冷えたドリンクを常備しています。ビールですか?さすがに置いていません(笑)。

  この発電所は2016年1月に運転を開始しました。王子製紙のグループ会社ですから、私たちは林業とはもともと深い関わりがあります。山林に放置されている残材を『資源』として生かすことで自然の恵みをムダなく利用すると同時に、林業やチップ加工、運送に携わる方々の事業に役立ち、森林育成や地域の活性化につながればと思い、ここを開設しました。北は歌登、東は遠軽・阿寒など、北海道各地から燃料となる資材がここに集まります。最近は間伐材・林地残材のほかに、台風で倒れてしまった木なども受け入れています。昨年9月の北海道胆振東部地震で発生した震災木もまもなく受け入れ予定です。

  私自身は2016年11月に着任しました。それまでは釧路にあるグループ会社の発電所に18年間いて、その前は苫小牧工場にいました。ずっとボイラータービン関係の仕事をしています。ボイラーマン一筋44年です。こちらに着任して思うのは、ここでつくっているでんきはまぎれもなく地産地消のでんきであるということ。北海道の材を使って、北海道で発電して、北海道の皆さまに電気を供給している。地球にやさしい、地域にやさしいでんきであるということです。トドック電力を通じて、多くの皆さまにご使用いただけたら、私たちとしてもうれしいです」

6月と7月の2度にわたってトドック電力主催「再生可能エネルギー発電所ツアー」を開催し、各日30名の組合員さんが江別発電所を見学しました。トドック電力はこれからも再エネ普及に向けた事業を行う予定です
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