─スーパー魚長では、従来から徹底した 節電に取り組んでいると聞きました。
ええ。実は10年前までは「とにかく明るければ良い」と必要のない場所の照明までつけていました。2009年に事業改革期を迎え、コープさっぽろ様との事業提携をさせていただきましたが、最初にご指摘いただいたのは使用電気の中身でした。それまでは請求書が届いても使用した詳細を確認せずに支払っていたのですが、冷静に見直すと使用量・料金ともに想像以上!要するに丼勘定だったわけです。年間数億円も支払っているのに、私を含め社内の誰もが営業損益の中で気にしていなかった事実にも驚きました。そこで経費の「見える化」、電力の「見える化」に取り組みました。すると、それまであたりまえと思って見過ごしてきたことの中に数多くのムダがあると気づきまた。たとえば開店前に店舗の基礎照明を100%つけて作業したり、夜中もトイレの便座ヒーターをつけっぱなしにしていたり。微々たるもの?そんなことはありません。19店舗に4つずつ便座があるとして、それが毎日(365日)ですよ!店だけじゃなく、事務所内も使っていないコピー機やシュレッダーの電源がいつもオンになっていました。そこで、店舗・事務所内の節電を実施して、経費の削減、いいえ、経費の適正化に全力で取り組みました。店内照明は必要最低限にしました。そのせいでお客様からは「店が暗い」「この会社、大丈夫?」なんて言われて。そこで店内に「電力安定供給のため節電中」というPOPを掲示して理解を求めたんです。社員も最初はあまり乗り気じゃないようでしたが、損益を公開し、毎月の電気使用料の情報も共有したことで、積極的にカイゼンに取り組むようになりました。結果はすぐに表れました。電気の使用料は1年後には年間で8%減り、最も効果が出た年には取り組み開始当初の30%減を達成することができました。
─最大で3割ですか!節電に取り組んだ ことで得られたことはほかにありますか。
電気だけではなく、何事にもムダを見つける目で業務に臨むことの大切さに気づきました。たとえば商品の冷凍室ですが、棚卸のときに寒いからと開けっ放しにしていた社員がいました。なぜ寒いのか、理由は簡単です。整理整頓できていないから棚卸に時間がかかるんです。在庫の持ちすぎも原因でした。「カイゼンできるまで冷凍庫を使うな!」と言ったら現場は猛反発(苦笑)。でも、整理整頓して在庫を減らせば、楽になるのは自分たちなんです。昨今、問題視されている長時間営業も、在庫を持つことで起きるフードロスも、作りすぎのロスも、すべてムダな作業に端を発しています。今からでも遅くない。気づいたらそのときに直す。それをコツコツ継続することで変わるはずです。気づきといえば…今年の冬は特に雪が少なかったですね。畑の作物もそうですが、海の魚が心配です。本来なら山の雪が解けて養分を含んだ水が海に流れ、魚たちはその栄養分を摂取して育つのに、これだけ雪が少ないと生育に影響するんじゃないか。そう嘆く漁師もいます。温暖化の影響なのか、何なのかは分かりません。でも、自然環境とエネルギーの維持にすべての人が関心を持つことがこれからは大事。我関せずは今の時代にそぐわないですよね。何でも便利になり人との関りが希薄な現代ですが、私は個人的には、右脳を使ったアナログ人間に戻った方がいいと思います。私の趣味はランニングですが、知らない街でも自分の足で走れば、感覚的にいろいろ分かってきて、地図アプリを見なくても不思議と道に迷わないんです。私の孫たちは自然が大好きでアウトドアで育っていてたくましいですよ(笑)。不便な環境にふれる機会を作ってあげたらよいと思います。きっと学ぶことがいっぱいあります。
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