―まずは、株式会社ナシオの事業について教えてください。
株式会社ナシオは明治44(1911)年に北見で創業し、まもなく110年を迎えます。現在はコープさっぽろをはじめ道内スーパーやドラッグストア、コンビニ、全国の小売店へお菓子類を供給しています。
―大手メーカーの商品だけではなく、オリジナル商品も展開されていますね。
はい。10年程前に自社ブランド「ノースカラーズ」を立ち上げました。北海道産を中心とした純国産の商品シリーズをはじめ、オーガニック、無添加、健康志向、環境に配慮した商品づくりなど、さまざまな切り口のお菓子を提案しています。北海道はもちろん、近年は特に首都圏で反響があり、売上はここ4~5年で3倍ぐらい増えました。ポテトチップスにしてもかりんとうにしても値段は多少高いのですが、それでも選んでいただいているということは、お菓子であっても地産地消を求める声や健康意識が高まっていることの表れなのかもしれません。
―商品の売れ行きを通して、消費者 意識の変化が見えてくるわけですね。
ええ。やはり私も感じるところですが、異常気象が続いたり、ちょっと前まで当たり前に捕れていた魚が姿を消したりと、自然環境も昔と比べてずいぶん変わりました。このままいったら次の世代はちょっと大変だな、従来の考え方や生活様式を切り替える時期に来ているなと思います。日本でもSDGsという言葉を頻繁に耳にするようになりましたが、世界的に脱炭素社会の実現へ向けた動きが加速する中で、私たちとしてもできることを一つひとつやっていかなければならないんじゃないかと非常に強く感じます。私たちは問屋や卸しといったいわゆる商社ですから、製造や建築分野に比べてSDGsに直接関与する取り組みは限られているかもしれません。ですが、「ノースカラーズ」のような商品提案であったり、日々の事業を通して少しでも貢献できたらと考えております。昔は問屋といえば、山のように在庫を抱えてそれを売るのが当たり前でしたが、私たちは今、できる限り在庫を圧縮し、その上で欠品を起こさないよう、コンピューターを活用した管理システムを日々アップデートしながら、ムダを出さない努力をしています。こうしたことを通じてSDGsにつながる仕事をすることが大事だろうと考えています。
―2018年9月に発生した北海道胆振 東部地震と、その後のブラックアウトに よる影響はいかがでしたか?
幸い私たちは全国に支店がありますから、道外のメンバーがバックアップしてくれて、ブラックアウトの状況でもお取引先には何とか迷惑をかけずにすみました。ただ、自社だけが何とかなったところで、メーカーや物流倉庫との連携が図れなければモノの流れは絶たれてしまいます。災害で電気などに問題が生じた場合でも事業が継続できるよう、事業者の垣根を越えて約束事を決めたり、システムを構築する必要があることを痛感しました。そしてもう一つ見えてきた課題は、石炭火力に大きく依存する北海道の電力事情です。大型電源が失われた場合のリスクもあるし、化石燃料を使った火力発電はCO₂排出の問題もあります。原子力発電という選択肢もありますが、東北の大震災で経験したように、人間の手に負えないなという感じが非常にいたします。そういう意味では、再生可能エネルギーに対する期待は大きいですし、もっと広げていかなければと思いますね。
─トドック電力では「再生可能エネル ギー100%メニュー」を用意しています。
世の中の流れとしてもそちら(再エネ)を選択していくことになるんじゃないかという感じがいたします。食の分野における安全安心もそうですが、企業もそうした方向へ舵を切って、自分たちの世代、さらに次の世代が生活していけるような環境を築くことが大事だと思います。