SPECIAL もっとわかる、エネルギーのこと

#スイッチなひと

札幌新陽高等学校 校長 荒井 優さん

#007 荒井 優(あらい ゆたか)さん

1975年札幌市生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。株式会社リクルートなどを経てソフトバンク株式会社社長室配属。東日本大震災を機に、孫正義氏が行う復興支援活動の責任者を任される。2016年2月より現職。

2016年に教育“素人”ながら祖父が創立した札幌新陽高校の校長に就任。「本気で挑戦する人たちの母校」をスローガンに掲げ、ベンチャーマインドで次々と学校改革に取り組む荒井優校長に教育やコロナ時代、エネルギーの未来についてお話を聞きました。

─荒井校長の就任以降、新陽高校は 定期テストをやめたり、偏差値ではなく 経験値を重視する「探究コース」の新設 などさまざまなチャレンジを行っています。 目指す教育について教えてください。

新陽高校では、大学受験のための知識の丸暗記よりも、「自ら考え、体験し、実践する」教育を大切にしています。教科書の知識は人類が20万年かけて発見してきた英知の塊です。たとえば高校数学で対数(log)を学習しますが、これ自体習ったところで、なぜ必要なのかよく分かりませんよね。ところで今回の新型コロナで感染者数を表すのに対数グラフがよく使われているのをご存じでしょうか。対数グラフにすることで増加のパターンが読み取れるからです。そうした経験を通じて「だから対数って大事なんだ」「勉強って必要なんだ」と気がつきます。新陽高校で重視しているのが暗記型よりも対話型の授業です。特に「探究コース」では少人数のグループに分かれて圧倒的に議論を重ねます。教師が生徒に一方通行で教える「1対n」の授業スタイルでは、本質的な対話・議論は生まれません。イメージとしては文化祭に近いでしょう。文化祭は毎回必ずもめますよね。必ずしも答が用意されていない課題に対して、どう取り組むか。自分の頭で考え、他者のいろいろな意見を取り入れながら、解決の糸口を探る。この経験は必ず子どもたちの成長につながると考えています。

─2019年9月に新陽高校はコープさっ ぽろと業務提携を結びました。コープさっ ぽろとの連携に何を期待し、どんなことを 実践していますか?

組合員の出資で成り立つ生活協同組合は組合員のためのサービスを基本にしていて、この点で「生徒のために」授業を行うわれわれとよく似た部分があると考えています。また、コープさっぽろは組織全体に「素早く」「徹底的に」「何でも挑戦してみよう」という文化が根付いている印象があります。「高校とコープが連携したところで何ができるか分からない」、たしかにその通りです。でも「とにかくやってみよう!」というスタンスでお互いに始められたのが良かったですね。これまでに生野菜を使ったジュースの商品化に挑んだり、SDGsをテーマにした授業を一緒に実践しましたが、生徒は壁にぶつかる中で、自分たちで課題を見出しながら、貴重な学びを得ています。授業に参加したある生徒はコープのことをもっと深く知りたいと言って、いま、西岡店でアルバイトをしているんですよ。

 

 

─すごい!まさに探究型ですね。そういえ ば新陽高校はコロナの影響で全国的に 休校措置がとられた中、いち早くオンライ ン授業を始め、話題になりました。

北海道独自の緊急事態宣言が出た翌日(2月28日)からオンライン授業を始めました。それだけ早く対応できたのは、4年前からデジタル化を進め、生徒全員にiPadやタブレットを持たせていたことも要因の一つです。ただデバイスがそろっていたからできたわけではなく、学校全体で4年間かけてICTを取り入れる組織文化を築いてきたから、ここまで質の高い授業ができているんだと思います。今日じつはIT企業の社長を講師に招いて、WEB会議システムを使った授業を実践しました。講師は会社に、生徒は自宅に居ながらにして授業が成立してしまうんです。これは大きな可能性を秘めていて、たとえば新陽高校の生徒と東京の高校生をつないだり、国境を越えて授業をすることもできます。そうすると学び方はもちろん、学校という枠組みそのものにもとらわれる必要がなくなるかもしれない。コロナのせいで始めた自宅学習ですが、図らずも教育の新しい可能性を示唆してくれたわけです。これに限らずコロナはいろいろな気づきを与えてくれました。経済のあり方や都市のあり方、仕事、お金、家族、健康…、さまざまなことを見つめ直す契機になりました。その一方で、同じぐらい切羽詰まった課題として忘れてはならないのが地球温暖化の問題です。こちらの方がもっと根深い。コロナの問題は自分自身を含め地域社会など横のつながりに関わるけれど、地球温暖化の問題はわれわれの子どもや孫、さらに先の世代に影響します。いまを生きるすべての人類が未来への責任として取り組む最重要事項であり続けています。コロナが収まったその次には、コロナと同じくらいの熱量で、それぞれの産業や生活におけるエネルギーのあり方に対して、いま一度、みんなで向き合う必要があると私は思います。

オンライン探究学習 SHISHOKU会 札幌新陽高校 ~北海道の宝物プロジェクト~

荒井校長へのインタビューから数日後の5月14日、札幌新陽高校主催でオンライン探究学習が行われました。テーマは「牛乳」。休校による給食の停止や飲食店の休業により消費が落ち込む牛乳を題材に、国内外から高校生はもとより社会人を含む100名以上の“生徒”が参加してオンラインで学びました。講師には別海町や福島県の酪農家に加えて、コープさっぽろ執行役員の対馬慶貞さんも参加し、牛乳にまつわるサプライチェーン(流通)の課題について話をしました。荒井校長がインタビューでふれたオンライン時代の新しい学びが早くも実現。学校の枠を越え、可能性はさらに広がりそうです。

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コープのでんきにスイッチした人へのインタビューです。

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