SPECIAL もっとわかる、エネルギーのこと

#スイッチのうら

十勝清水バイオマス
エネルギー株式会社(清水町)
代表取締役 泉谷 哲人さん

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 牛のうんちでエネルギーをつくる。そんな夢のようなビジネスに挑む農家さんがいます。酪農家9戸とJA十勝清水町が出資して立ち上げた十勝清水バイオマスエネルギー株式会社は、今年の夏の売電開始をめざしてバイオガスプラントを建設中。再生可能エネルギーの普及拡大を推進するコープさっぽろは、この取り組みを応援しています。まもなく完成を迎えるプラントにおじゃましました。

 「清水町では以前からバイオマスタウン構想を打ち立て、ふん尿のようなバイオ燃料を資源として活用し、まちづくりに役立てる計画を進めていました。3年ぐらい前に農協と役場が音頭を取ってバイオガスプラントをつくりませんかという話が出て、それじゃあ農家仲間で一緒にやろうということで手を上げたんです。酪農家にとってふん尿処理は避けられないテーマです。現在は各々の農場で堆肥に変え、牧草栽培の土づくりに活用していますが、自家処理でまかなうには現状で手いっぱい。さらに乳牛の頭数を増やそうと思っても、ふん尿処理がボトルネックになって乳牛を増やすことができません。バイオガス発電なら、その過程でふん尿を完全に発酵させるので臭いも出ないし、副産物として液肥が得られます。何よりでんきを売ればお金になります。一石二鳥どころか一石三鳥、一石四鳥なんです」。

泉谷さんの農場は個人経営で約880頭を所有するメガファーム。25歳で経営を引き継ぎ、16年かけて規模拡大を進めてきた

「バイオガス発電」のしくみ
有機ゴミを発酵させて可燃性のバイオガスを取り出し、そのガスでガスエンジン発電機を回す仕組みです。ガスをつくる際に出るバイオ原料の残り(消化液)は、固形分(敷料)と液肥に分離することで活用できます。

 2017年4月、泉谷さんら酪農家9戸はJA十勝清水町との共同出資で会社を設立しました。ところが、でんきをつくるノウハウはありません。そこで、コープさっぽろの子会社である株式会社エネコープがこの取り組みに協力することに。実はエネコープは6年前から七飯町でコープさっぽろから排出される食品残渣を利用したバイオガスプラントの実証実験を行ってきました。その経験を生かし、プラントの設計、コンサルティングを行うことになったのです。

 プラントはまもなく完成。7月には発電実験がスタートします。「去年の地震のブラックアウト(停電)で問題になったように、酪農はすごくでんきを使います。バイオガスプラントを建設すれば、ふん尿ででんきをつくることができ、副産物の液肥は畑にかえって牧草の栄養となり、それが牛を育てます。まさに循環型のシステムです。20億円の投資はたしかに大きいかもしれません。償還は13~14年先になるでしょう。でも、これは未来への投資だと思っています。将来まちのあり方がどうなるかは分からないし、うちも子どもが継ぐかどうかは分かりません。ただ酪農をやりたいと思ったときに背中を押せるよう、せめて基盤だけは築いておきたい。それだけですね」。

十勝清水バイオマスエネルギー株式会社が建設を進める清水町美蔓ガスプラント。売電電力量は1時間あたり494kWhで、一般家庭のおよそ1.5カ月分に相当

これからの地域循環型モデルへ
北海道は自然エネルギーの宝庫です。バイオガス発電は北海道の一次産業とリンクした、真に北海道らしいでんきといえます。十勝で生み出したでんきを十勝で使う。これぞまさにエネルギーの地産地消ですね。売電は7月以降の予定と聞いていますが、可能であればトドック電力で取り扱わせていただき、さらに一歩進んで副産物の液肥をコープさっぽろの園芸コーナーで販売することができたら、絶好の地域循環型モデルになると思います。
(株式会社エネコープ 専務取締役 渡邉美彦)

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